

末松理事長に聞いた明日へ向かってのこと
【明日へ向かってにインタビューしてみた感想】
私は「福祉」と聞くと、個人の支援というイメージが強くて、どちらかというと医療に近いようなイメージをもっていました。だけど、「明日へ向かって」を取材してガラッとイメージが変わりました。福祉分野は社会的な支援をされるという印象を勝手にもっていましたが、ここでは逆に、社会貢献のための福祉として、事業を実践されていて、職員も利用者の方も個性が活きたとてもいい雰囲気の法人でした。発想の転換でここまでイメージを変えられるのが素晴らしいと感じました!
障がいを持った方への配慮をしながらも、個人の能力を引き出すのは難しいことだと思いますが、それを実践されていて、活躍の機会が生まれていることが素敵で感動しました。自立を支えるだけでなく、自己の価値も実現されているように感じました。このような事業がもっと増えてほしいです!
はたらくふくおか初!「社会福祉法人」の取材
今回の記事では「社会福祉法人 明日へ向かって」を紹介します。
明日へ向かっては東区を拠点に、「福祉」という枠にとらわれない多彩な取り組みを次々と生み出しています。障がいを持つ方の就労・自立支援を軸としたカフェやお菓子づくり、アート工房などの施設が点在し、利用者はそれぞれの感性を全面に活かし、のびのびと活動をしています。
お話を伺う前に、施設を見学させていただきました。
ケーキづくりをしているお菓子工房
活気にあふれたこれらの施設のことや、実際の仕事内容について、社会福祉士の資格をもつ支援員の野口さんにお話を伺いました。
もともとは心理学の勉強がしたかった
お話しを聞かせていただいた野口さん
今日はよろしくお願いします。
早速ですが、野口さん。ご出身はどちらですか?
出身は北九州市ですね。
そうなんですね。働き始めて福岡市に来た感じですか?
福岡での暮らしはいかがです?
そうですね。買い物に行ったり、カフェに行ったり、交通機関も便利なので、すごく暮らしやすいと思います。
北九州にいた時は実家暮らしでしたが、今はひとり暮らしをしているという面でも結構違いがありますけどね。
小さい頃から「福祉の仕事」に興味があったんですか?
いや、小さい頃はそうでもなかったんです(笑)もともとは心理学の勉強がしたくて。
なので、大学では心理コースに進んで、そこで福祉の勉強をすることになって。実習で、障がい者施設を訪問したりするうちに、福祉分野に興味を持つようになりました。
そうなんですね。通っていた学部は?
保健福祉学部で、そのなかの心理コースでした!
就職先を「明日へ向かって」に決めた理由
福岡にはいろんな事業所があると思うんですけど、どうしてこちらを選ばれたんでしょうか?
大学時代に資格実習や見学をしてきました。
「明日へ向かって」には、実際にこの場所に見学に来たことが大きいです。目の前で、障がいの分野の垣根を超えていろんなことに挑戦しているというのを知って、それから興味が湧いて、ここで働きたいと思いました。職場体験をしたあとも、改めていいなと思いましたよ。
明日へ向かってを知ったキッカケは何ですか?
最初にこの法人を知ったのは、大学の求人課の先生からの紹介でした。
そもそも、福岡で就職がしたいという思いはあって。それで色々と探していたところ、ここが見つかって。
なるほど。障がい者支援の分野ではなく、例えば老人ホームのような高齢者福祉の分野で働いてみたいとか、そういった思いはありませんでしたか?
あくまで個人的意見ですけど、両方の実習を受けてみて、私は障がい者支援の方にやりがいを感じたので。
特にここは、枠にとらわれていない感じですし、色々な「挑戦」が見えるところがいいなと思いました。他にない取り組みをたくさんしているなぁと実習の時に感じたのを覚えています。
文化活動の多さが特徴
今更ながらの質問なのですが、「福祉」の中には、どんな分野があるのでしょうか?
大きく分ければ、高齢者福祉・障がい者福祉・児童福祉などですかね。
なるほど。それぞれ必要な資格なんかも違ってくるものですか?
そうですね。
私は「福祉」と聞くと病院や医療をイメージしてしまい、なんというか「提供する」ものという感覚でした。でも、先ほど現場も見させていただいて「明日へ向かって」で取り組んでいる事業は、利用者に合わせたスタイルになっていて、社会に必要なものだなという雰囲気を感じました。野口さんが、これからも働いていく中で、「私はもっと福祉をこうしていきたい」っていうイメージはありますか?
え〜なんだろう。福祉をこういう風に・・・難しいですね(笑)
「明日へ向かって」は、福祉とクリエイティブの要素が混ざっていて、結構特殊というか、変わった切り口で間口を広げられていると思いました。それについては、同業者と比較して感じられるところはありますか?
そうですね。一番は「文化活動」を数多くやっているなと感じます。
同業種の友達に話を聞いて比べてみても、実際そうみたいですね。海外研修に行って、いろんな国の福祉を学んだりもしているので、そういったつながりから、新しい文化的活動を取り入れたりとか。福祉の枠を超えたことを、たくさんしている感触はあります。
ハロウィンイベントでの様子
やはり、珍しいことなんですね。取り組みについてお話された、そのお友達の方の反応はどんな感じでしたか?
「すごいね」と言ってくれました。そのお友達のところでは、基本的に、1日の決まった流れに沿って支援をしていると聞いたのもあり、ウチはいろんな活動しているんだなって、改めて思いました。
きっと、他ではなかなかできない面白い体験ができるから、利用者の方々もイキイキと過ごされているんでしょうね。
仕事の内容は「生活の支援」
野口さん自身は、日頃どのような仕事をしていますか?
私は、障がいをもった方の生活支援をしています。
主に「生活介護」という部署で働いていて、言葉通り生活の支援をしています。
生活の支援というと、具体的にはどんなことでしょうか?
そうですね。トイレの介助、水分補給、食事のサポートや移動のお手伝いとか。
入浴とか、お買い物に行きたいという人がいれば一緒に出かけたりとかもありますし、ひとことで言えば、生活する上で必要な暮らしにまつわるサポート全般をやるといった感じですね。
まさに1日の暮らしに関わる「生活の支援」ですね。
利用者の方は、住み込みになるのですか?
基本的には住み込みではないですね。
「グループホーム」というのがあって。例えば建物があって、その中で、365日24時間ずっと過ごすという形ではなく、日中は通所サービスを利用しています。一方で「入所施設」というと、こちらは24時間、その中でずっと過ごすという違いがあります。うちはショートステイも大きな特徴です。月に100人以上が泊まりに来ていますよ。職員が月に2、3回ずつ、交代で勤務をするという感じです。
勉強になります。そういった違いがあるのですね。
利用者の個性をどう見つけるか
明日へ向かっての特徴として、利用者の方の興味や個性を大事にした活動をしていることがあると思います。ここでは、どういう風にその方の可能性や個性を見極めているのですか?
私はまだ2年しか働いていないので、実は見極められるレベルではないんですけど…(笑)
ただ、日頃ともに過ごしていて、「あ!こんなことができるんだ!」という、利用者の新たな一面が見られることはあります。その発見が大事だと思いますが、それを見つけるために、いろいろな方向から探っていってます。
一緒に過ごすなかで見つけていくんですね。
ここは、ものづくりだったり、お菓子をつくったり、いろんな場所がありますが、利用者の方がそれぞれに行きたい場所を選んでいるのですか?
入所されるときに実習があるんです。
一度うちの施設に来てもらって、見てもらって、その方の希望に応じて決めていきます。しっかり働いて給料を得たいという方には、それが可能な場所になりますし、じっくりと自分のできることをしたいという方は、それを探していきます。なるべく利用者の方が何をしたいかに合わせていきます。
しっかりコミュニケーションをとって、確認されていくんですね。
希望場所が途中で変わったりすることもあるんですか?
ありますよ。それは、うちの良さかもしれないですね。
たとえ、ここの部署がなんか合わないな〜と悩んでしまった時も、別の部署がいくつもあるというのは、安心できる部分かと思います。
やりたいことが変わることもありますよね。
施設を見学させてもらった時に、お菓子をつくられている部署がありましたが、味の評判はどうですか?
おかげさまで好評ですよ。
小さなショップも運営していて、そこには、地域の方が結構買いに来てくださってますね。
地域の方々からも、受け入れられてもらっている印象はありますか?
そうですね!カフェも運営しているのですが、いつも満席なんです。
地域の方が、たくさん来てくださっているので、私たちでさえも予約が取れない状態です(笑)
嬉しい状態ですね(笑)
どんなメニューがあるんですか?
週替わりランチや、生パスタ、スイーツなんかがあります!
こんな感じのおいしいスイーツが楽しめます
おしゃれですね!カフェで働いている方はどんな方ですか?
軽度の知的障がいを持った方が多いですね。
なるほど。明日へ向かってでの経験が活きて、例えば他の企業に就職される方もいたりするんですか?自分が成長してきて、また新しいことがやりたくなったりとか。
一般の企業に転職された例は少ないですが、ただ、最低工賃を保証されるタイプの就労支援事業所に移られる方はいらっしゃいますよ。
そうした、ステップアップの道はあるってことですね。
はい!
必要な資格はある?ない?大学の学科は?
野口さんのような仕事に就くためには、なにか特別な資格が必要ですか?
いえいえ!資格は何も持っていなくても、働きはじめられますよ。
そうなんですね。
聞いたことあるもので言えば、「介護福祉士」とかが必要だと思っていました。
もちろん持っていると、自信を持って支援にあたれますね。ただ、明日へ向かっての場合は、特別な資格を持っていなくてもできることはたくさんありますよ。先輩職員のみなさんが丁寧に教えてくれるので、現場でスキルアップできます。
野口さんは、この資格とりたいなあと思うものはありますか?
実は今も、資格としては、介護福祉士と社会福祉士は持っているんですよね。次、新たにというのはまだ考えていないです(笑)
え〜!すごい!
ちなみに、どんな学科からでも働けますか?
働けます!実際にいろんな学科の方がいますよ。法学部だったり(笑)
なので特別、大学で福祉の勉強をしてなくても大丈夫です!
そうなんですね。
学科は福祉じゃないとしても、なにかやっておいた方がいいことはありますか?
福祉系の仕事で働くとなると、やはりいろんな施設で体験をしておいたほうがいいかなとは思いますね。施設によってそれぞれで、ひとつひとつ違うので、「こういう雰囲気の方が自分に合うな」という感触は大事かな。
同じ福祉分野の仕事でも、施設ごとに違いがあるんですね。
野口さん、将来の夢はありますか?
いまのところ具体的にはないんですよね(笑)
持った方がいいかなと思うんですけど。
例えば、今年こういうことを身に付けたいとか、こういうことに挑戦したいな、とか目標はありますか?
目標としては、いま担当している業務で、新しい商品を作ろうとしている段階なのですが、その商品を完成させることですね。
具体的な目標でいいですね。
そうした商品開発は、利用者の方と一緒に話し合って作っていくんですか?
私の部署は、重度障がい者の施設なので、メインで開発しているのは私たち職員ですね。ただ、こういうのはどうだろうとアイデアを出しあいながら作っています!
やっぱり皆さんの笑顔がやりがい
働いていて、ツラいな〜と思うことはありますか?
う〜ん。無いとはいえないですね。
利用者の方とうまく接することができなかった時とか。どうしたらよくなるかな〜と考えて、いろいろチャレンジしてみても、「これではダメだ!」となることもあります。こんな状況が続くと「あああ〜〜〜」っと頭を抱えますね(笑)
なるほど。
でも、仲間に相談して、やり方を変えてみてみると、そこから新しい可能性が引き出されてきます。そうすると色々なものが見えてくるので、それを楽しみにしながら頑張っています。
なかなか感情を出してくれない利用者の方もいらっしゃいますか?
そうですね。声をかけても反応が薄い時もありますが、あまりしつこく付きまとってしまうと逆効果になったりもするので。そうした判断をしながらなので、声掛けはすごく丁寧にしますね。
もちろん、個人差があるので、その方の許容範囲っていうんですかね。しっかり話した方がいい方とそっとしておいた方がいい方もいますから。その判断は難しいんですけど、そのあたりがわかるようになってきたら、すごくやりがいになりますね。
やはり個性を大事にされているのが印象的ですね。
今日見学させてもらったなかでも、とても個性があって、のびのびと活動されている姿がすごくいいなぁと思いました。
私たち職員から見ても、本当に皆さん個性豊かだなと思います!
ほかに何かやりがいを感じることはありますか?
そうですね。以前は、特定の利用者さんとしか関われなかったんですけど、今は結構たくさんの方と接するようになってきて。やっぱり皆さんの笑顔が引き出せた時は、やりがいになりますね。
素敵ですね。野口さんの人柄が伝わってきます。
職員の数は足りている?
ニュースなんかで福祉分野は人手が不足しているという話題を聞くのですが、明日へ向かっては、職員さんの数はどんな感じですか?
足りていないことはないですね。施設ごとに適切な人員の数が決まっていて、その人数で上手くまわしてます。ただ、もちろんもっと働き手がたくさんいれば、また一層、手厚い支援ができる可能性はありますよね。
こんなサービスをしていきたいというイメージはありますか?
好きなこととか、興味のあることって当たり前ですけど、一人ひとり違うじゃないですか?今もそれを頑張って見つけていっているんですけど、もう少し深く見つけていけるんじゃないかって思っていて。やっぱりそれぞれの個性に合わせた接し方ができると嬉しいですよね。それが自分自身の楽しみにもつながって来ると思います。
一人ひとりともっと深く関わることが大事になりそうですね。
そうなんです。毎日たくさんの方と接しているんですけど、時間は限られているので、その数が多いほど一人ひとりに対する時間は短くなってしまいます。なので、言ってしまえば職員は多いに越したことはないかと思います(笑)
いま、人材不足はどの仕事でも言われていますもんね。
40〜50代の社員さんもいらっしゃいますか?
いますよ!でも、どっちかと言えば若い人の方が多いですね。
そうなんですね!新しい方も入ってきていますか?後輩のご指導とか、どんな感じです?
うちではメンター制度をとってます。
新人にしっかりと担当の先輩がついて、指導やサポートをするようなイメージですね。そんな先輩のことをメンターと言いますが、私も今そのメンターをしています。自分が新人の時にも、メンターがいてくれて、その方によく相談していました。あと同期もいたので、互いに話あったりしましたね。先輩でも、年が近い方が多いので、仕事のこともプライベートなことも、他愛ないことも、なんでも話しやすい環境かなと思います。
とてもいいですね。職員さんは、女性が多いんですか?
割合としては女性のほうが少し多いという感じですね。女性でも働きやすい職場だと思います!
就活は、いっぱい悩んでもいいと思う
野口さんは、就職活動でここ以外も受けられましたか?
いえ!第一希望でここに決めていたので、内定をもらえてからは全く。
ボランティア体験で他施設に行ったりはしましたけど、その段階では内定をいただいていたので、受けなかったですね。
おぉ〜。迷いがなくて、かっこいいですね。
では、最後にこれから就活をする学生にアドバイスをお願いします。
いろいろ悩んだりとか、難しいこともあると思うんですけど・・・。
その時期は、いっぱい悩んでいいと思うので、自分のやりたいことは何かしっかりと考えて、就活を進めていくといいと思います。
素晴らしいアドバイスをありがとうございます。
福祉分野で働きたいと思っている方にもメッセージをお願いします。
まず実際に現場を見てみることですかね。
うちは、見学もできますので、興味のある方は、まずお電話ください!(笑)
野口さん自身も実際に現場を見て決められたという経緯があるので、説得力がありますね。
今日はありがとうございました!
【企業情報】
社会福祉法人 明日へ向かって
〒813-0025 福岡市東区青葉2丁目11番9号