INTERVIEWS
FILE 20

株式会社エスティ環境設計研究所

福岡市博多区須崎町12-8

更新日 : 2019年11月1日
大学生編集部の私が聞きました!
へいま
メディア関係の仕事に興味あり。大学でもメディアや社会学について勉強中。
たけべ
英語とプログラミングを勉強中。近い将来、会社を起こしたい。

渋江社長に聞いたエスティのこと

【エスティ環境設計研究所にインタビューしてみた感想】

最初にエスティさんの企業名を聞いた時、「研究所」とついていたので、メガネをかけて白衣を着たようなちょっとお堅い人がたくさんいるのかと思っていました。しかし実際に行って、話を聞いてみると全くそんなことはなく、みなさん明るく、私たちにとって実は身近な仕事をされている企業さんなんだなと感じました。

理系分野のお仕事なので、少し堅い印象を持って取材に行ったのですが、社長の渋江さんをはじめとして、社員さんみなさんが明るく、仕事に対してやりがいと情熱を持って働く姿に感銘を受けました。

 

株式会社エスティ環境設計研究所を取材!

今回は「風景のデザイン」を仕事とする企業、エスティ環境設計研究所(以下、エスティ)にやってきました。環境設計研究・・・?どんな仕事?と思われた方も少なくないでしょう。

エスティさんでは、ランドスケープデザインと言われる「公園や公共空間、まちなみを設計する」仕事や、まちの景観を調査し、保全の方針を決めていくような「景観計画」。地域の活性化や観光振興の計画、住民参加の仕方を決める「地域づくり」、「文化財や世界遺産などの保存・活用計画」など、風景に関わる幅広い分野のお仕事をされています。お話は、森永さんに聞いてきました!

 

ものではなく、人がいる風景をつくりたかった。

こちらが森永さん

 

今日はよろしくお願いします。森永さん、ご出身はどちらですか?

出身は長崎県の諫早市です。
諫早湾の干拓事業って聞いたことあります?あのまちです。

聞いたことあります。大学生の時はどんな勉強をしていたのでしょうか?

土木の「景観デザイン」という分野を勉強していました。研究室のプロジェクトでは風景をつくっていく過程を現場で見て。プロジェクトに参加するなかで、「景観デザイン」の仕事をしたいなと思うようになりました。景観ってすごく対象の幅が広いものなんですが、私は「多様な人が多様な過ごし方をできる空間」をつくってみたかったです。

土木分野に興味を持ったのはいつ頃ですか?

高校の時は工学分野で学んでいて、物理学やものをつくることが好きだったんです。なので、仕事も工学系に進みたかったんですが、ものを対象とするより、人を対象にする工学の仕事が良いなって思ったのが理由ですかね。土木には橋とか道路のような構造物をつくる仕事もあるんですが、「多様な人がいる風景をつくる仕事」があることを知った時、面白いなと興味を持ちました。

取材に来るまでそんな仕事があるって知りませんでした。
エスティさんに就職したいと思ったきっかけはなんですか?

熊本の大学に通っていたんですが、研究室のつながりがあって、エスティのことは知っていました。幅広く活躍されているスタッフの方がいて、学生ながらに「こんなすごい会社が九州にあるんだ」って感じでした。それと、大学の先輩が就職されていたので、それも安心感があっていいなと。

知っている先輩がいる会社って、安心できますね。

ですね。とはいえ、もともと4年間は東京の別の会社で働いていたんですよ。その時は主にハード面の設計を行うお仕事で、道路や都市の土木構造物の設計をしていました。でも、東京で大きなものをつくるより、ゆかりのある九州の景観をつくる仕事をしたいなって気持ちがだんだん強くなって。それで転職しました。

そうだったんですね。
東京と福岡を比べて、いいと思うところは何かありますか?

よく言われてますが、東京と比べるとコンパクトで。会社の近くに住めるので、通勤時間もグッと減って、心のゆとりもできました。東京の時は片道1時間半かけて通勤してたので・・・。そう思うと、東京時代より1日あたり3時間も使える時間が増えたんですよね。疲れを溜めないで仕事ができて、働きやすいなと思います。それと、人と人がつながりやすく、いろんなネットワークを活かせることですかね。

 

 

ひとりの人との関係づくりが、まちづくりの一歩目。

あの・・・根本的な質問なんですけど・・・。
景観をつくったり守ったりするのって、誰のためにやっていることなんですか?

その場所に住んでこられた先人の方、今住んでいる方、そして将来使われる方、という風に多様な方のためにやっています。景観の仕事は「若い女性をターゲットにしています!」みたいに絞り込めないんですよね。形成するためにかかる時間も長いですし。「この時代の、この人たちのためにこうしよう!」ではなく、できるだけ俯瞰して、長い時間と広い視点で見ることが大事だと思います。

深いですね。
森永さんは、日頃どのような仕事をされていますか?

エスティでは、まちづくりや文化財の保存、公園や都市の設計など、多様な仕事があります。私はどちらかというと形をつくる「デザイン・設計業務」が多いですね。もちろん他もやるんですけど。1日の流れは・・・日によって変わりますね(笑)

会社にいる時は朝9時に来て、メールチェックとやりとりをして。その後、各打ち合わせに向けて資料をつくったり、チーム内でミーティングをしたり。その他の時間は設計や検討の時間などですね。

会社の外に出ていくことも多いです。外部との打ち合わせは週に4〜5本くらいあるかな。福岡をはじめとして、熊本、長崎、大分・・・色んな場所に行っています。

九州以外の現場もありますか?

エスティの仕事としては、鳥取とかもあります。九州ですけど、遠いところなら沖縄とかも。

私の担当で言えば、近いところは天神中央公園の改修、それから大野城市の高架下の活用事業に携わっています。県外だと熊本県の益城で震災後のまちづくりをサポートしたり。これは設計ではなく地元地域の協議会のみなさんと、どうやって町をよくしていこうか考えていく仕事です。

鳥取での住民ワークショップの様子

 

地元の方と一緒に考える。そんな仕事があるんですね。

そうですね。益城では、防災がテーマです。どうすれば有事の際に安全に避難できるか、地域の皆さんとまち歩きをしながら、「ここは危ないね」「ここはいい場所だね」と一緒に確認して、仕組みやルールをつくっていくような、まちづくりをしています。

大切な内容ですね。
仕事で心がけていることはありますか?

コミュニケーションをしっかり取ることですね。社内では業務ごとにプロジェクトチームをつくるんですけど、まずチーム内での情報共有が大事ですし、依頼主、行政の方々、民間の方々、地域住民もいるので、それぞれにしっかり対応する必要があります。

社外の専門チームと組む仕事だと、また私たちの考え方と異なるので、どう一緒に努力するのか、コミュニケーションが必要になってきます。人と関係をつくることができてはじめて、まちづくりができると思います。

まずは、目の前の方とちゃんとコミュニケーションをとるのが大事ということですね。
依頼主はどのような方が多いですか?

主には行政で、市町村の都市計画だったり、まちなみをつくる部署の方々と仕事することが多いです。たまに民間のお仕事もあります。

まちづくりって、ソフト面からハード面の話まで、トータルコーディネートした方がいいものになるんですよね。なので、私たちだけで実現できない時は、積極的に他の専門のプロの方々と組みます。建築もそうですし、例えば、プロモーションをやってくださる方とか、イベントをやってくださる方だとか。協力しながら一緒につくっていく感覚です。

熊本(人吉市)でのまちあるきイベント

 

 

公園にパン屋??

福岡でオススメの景観はありますか?

色々ありますが、大濠公園は最高ですね。無意識に「この景観いいな」と愛着を持たれているから、あれだけ利用者がいるんだと思います。それと、弊社のプロジェクトで恐縮ですが、水上公園と天神中央公園もオススメです。水上公園は天神と中洲の間にあって、多くの人が訪れる場所になっています。天神中央公園は改修とともに新たにカフェやパン屋などのテナントが入り、賑わいの空間が生まれました。今後、もっと利用が増えて、いい空間になっていけばいいなと思います。

夜の水上公園、おしゃれです

 

天神中央公園って、誰の持ち物なんですか?

福岡県ですね。
公園の敷地の中には「貴賓館」っていう文化財があって。それを主役とした公園にすることと、天神と中洲をつなぐことをコンセプトとして挙げています。公園って公共のスペースなんですが、民間のお店が2つ入っています。これは今、全国的に広がりを見せている「パークPFI」という仕組みを活用しています。

改修が完成したばかりの天神中央公園、右に見えるのが貴賓館

 

パークPFI・・・?

ざっくり言うと、公園の中の民間施設と公園施設の整備・改修も一体的に行う仕組みです。この制度によって公募で選ばれた民間事業者は店舗を運営していいというルールです。いま、公共空間の使い方も変わってきていています。ただの公園ではなくカフェがあればもっといいよねという話ができるようになり、公共空間も民間の力を借りながら素敵な空間にしていくような世の中にシフトしていっています。

すごくいい仕組みですね。

従来は「何で公共スペースの公園でパンを売っていいの?」という感覚でしたからね。どうしても公平性が求められますし。もちろん公園で営業する民間事業者は、公益の視点を持っておくことは大切ですけどね。パークPFIの良い点は、運営の中で生まれた利益も活用して公園の管理も続けていけるので、綺麗な状態が保たれやすいことにもあります。利用者と運営者、また行政にもWin-Winの関係ができるんですね。

まちづくりって利益が生まれないイメージがありましたが、仕組みが変わればそんな風になるというのは目からウロコでした。

 

「よそもの」だからできること。

人工的に景観をつくったり手を加えていく仕事と、自然な景観を守ったり維持する仕事があると思いますが、どちらが難しいですか?

 

難しい質問・・・これはちょっと答えがでないですね(笑)

おっしゃるように、「積極的につくる、整備する」仕事と、「保護・維持・保全する」仕事の2種があると思います。どちらにしても対象の場所をよく知ること、理解することが何より大事ですね。

この場所の良いところは何かを知って、その上でそこに新しいエッセンスを加えたり、伸ばすことが適切であれば、足す方向性=つくることを考えます。

逆にちゃんと守らないと、いずれ無くなるという課題が見えれば、保護に向けた整備をする=守る手法が前に出てくるかなと思います。

つくる手法はイメージが湧きますが、守る手法はどういった内容がありますか?

「ルールの整備」ですね。まちなみの保全であれば、住んでいる人、開発する人など関わる人に「ここは触ってはいけません」とか「ここに手を加えるのであれば、これを守ってください」とか。良い状態を保つために必要なことを調べて、まとめて、伝えるんです。ルールをつくって渡していくことで、誰もが「これは守らないといけないんだな」という認識を広めていきます。

なるほど。ルールを共有していくんですね。

柳川市での例をあげると、柳川って「掘割(ほりわり)」と言ってまちなかにぐるっとお掘が巡っていて、その川下りが有名なんですね。まず、その「掘割に価値があること」を伝えて、それをどのように守るかを考えます。ルールがなかったら「管理が楽だから、全部コンクリートの護岸にしてしまおう」と、なってしまうかもしれない。それは極論かもしれませんが、みんながその価値を理解して「たとえ大変なことでも守っていこう」と思えるルールをつくるのが景観を守るために必要なことなんです。

大変な仕事ですね。価値観のぶつかり合いとか無いですか?

もちろんありますよ。いくら「文化財だから大事だ」といっても、人によって考え方が異なりますから。地道ですが、地元の人に説明をして、話を聴きながら、どうやったら受け入れてもらえるかをじっくり考えていきます。いきなり、よそものが来て「ここは綺麗だから触らないで」って言われても困りますよね。だからこそ対話をして「今まで大事にされてきたんですね」と思いを紐解いて「これからも大切にしていきましょう」という合意をつくっていく。こうしたプロセスを大事にしています。

よそものだからこそ、良いところが発見できることもありそうですね。自分が住んでいる場所のことには気づきにくい気がします。

それはよくありますね。「えっ、これに何の価値があるの?」というところから、「綺麗に整備すれば観光客も来るようになりますよ」って伝えると驚かれますね。

保全しながら地域に利益も生まれたらベストですよね。

そうですね。歴史ある観光地に行くと、看板や自販機の色に派手な色を使わないように規制されていたりします。実際にそういう規制を守ったまちなみを見ると「その方がいいよね」と思えるんですけど、そこにたどり着くまではなかなか難しいのが現状ですね。

自分たちが生きている時間より、はるかに長い時間守られてきた景観を、いまどんな景観にすべきか考えていく必要があると感じました。

 

まちとコミュニケーション。

仕事でやりがいを感じるのはどんな時ですか?

土木は長いスパンの仕事が多くて、すぐに成果として目に見えてこないことも多いのですが、形になったあとに、一番やりがいを感じますね。携わったプロジェクトで、家族とか友達が「この前そこ行ったよ!」と言ってくれたり、使ってくれている人の顔が見えると、嬉しいなと思います。

素敵ですね。楽しいことはありますか?

仕事で九州内いろんなところに行くので、空き時間に観光できたり、美味しいものを食べたりできることですかね(笑)

いいですね。現地で必ず見るものとかありますか?

とりあえず道の駅とかは寄っちゃいますね。地域の情報もたくさんあるので。地域のことを知るには、まず観光者視点で入るというのも大事で。ゆっくり過ごしてみると見えてくるものもあると思います。

情報を探すのは、ほぼクセみたいな感じですか?

そうですね。今でこそインスタ映えとか言われますけど、「視点場」という専門用語があって。「ここから見た風景いいな」という場所ですよね。そういうところは、無意識に探して写真に撮ったりしますね。

長崎県五島の風景、映えますね〜

 

「視点場」初耳でした。
最後の質問ですが、今後入社してくる学生に対して期待していることがあれば教えてください。

 

地域の方とたくさん話したり、 コミュニケーションが大事になるので、好奇心を持ってまちや人に接することができる人がいいかなと思います。

それと、イラストレーターやCADなどPCスキルは入ってからでも学べますが、どんなカタチにしたいか、どんな文章にしたいかというアウトプットを考えることは、早いうちから練習しておいた方がいいかなと思います。

私自身もですが自分の考えを伝える手段を持っていないと、苦労するんですよね。思ったことを文章で書いてみたり、グラフィックで表現してみたり、そういうことができる方は素敵だなと思います。

  

チャレンジしてみようと思います。
今日はありがとうございました!

 

【企業情報】
株式会社エスティ環境設計研究所
〒812-0028 福岡県福岡市博多区須崎町12-8